Premium Note
フォームを直す前に、条件を変えた日
高瀬 湊|ジュニア競技指導者(架空)
高瀬 湊|ジュニア競技指導者(架空)
地域クラブで中学生のバスケットボールを教える、という設定の著者。
この著者・会話・事例は創作です。実在の人物や日本SOMA協会の指導実績ではありません。
体育館の隅で、私は中学生のフリースローをスマートフォンで撮っていた。肘の角度を見せ、足幅を直し、「もう一回」と言う。十本目には形がきれいになった。ところが練習の終わり、ゲーム形式に戻ると、またボールが短い。私はその場で「集中して」と言いかけた。
その晩、動画を見返して気づいた。フォームを教えた場面だけ、私が選手のすぐ横に立ち、同じ場所から静かに打たせていた。ゲームでは、走った直後に仲間の声を聞きながら打つ。私が比べていたのは「教える前と後」ではなく、別の課題だった。
翌日、選手に謝った。「昨日は形だけを見て、試合で起きることを見ていなかった」。少し気まずい間があった。選手は「一人で打つときは入るんです」と答えた。私は初めて、その言葉を言い訳ではなく観察結果として受け取った。
それでも私は、次の練習で何を変えるべきか分からなかった。「フォームはそのままでいい」と決めるにも、材料が足りない。そこで、正しい形をもう一度教える前に、失敗が起きる条件を選手と一緒に探すことにした。
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