Premium Note
触れる前の三分間が、施術の方針を変えた
日下部 真帆|整体院スタッフ(架空)
日下部 真帆|整体院スタッフ(架空)
整体院で初回の聞き取りと記録を担当する、という設定の著者。
この著者・会話・事例は創作です。実在の人物や日本SOMA協会の指導実績ではありません。本文は診断・治療の助言ではありません。
予約票には「肩が重い」とだけ書かれていた。私は肩まわりの施術を頭の中で組み立てていた。来店した人は座るなり「今日中に何とかしてください。明日、長時間の運転があります」と言った。
以前の私なら、その言葉を「肩をほぐしてほしい」という依頼として受け取ったと思う。けれど、その日は手を動かす前に三分だけ聞いた。「いつからですか」「いつ、いちばん困りますか」「今日は何ができるようになれば助かりますか」。答えは、数週間前から続き、仕事の終盤に強まり、運転中に姿勢を変えにくいのが困る、だった。
裏話を一つ書く。最初の頃の私は、予約票の短い言葉を見ると、それに合う手技を早く提示できる自分を有能だと思っていた。説明の途中で相手が時計を見ると、質問は時間の無駄だと焦った。実際は、問いを省いた分だけ、相手の困りごとを外すことがあった。
この日の三分間で、私は予定していた説明をいったん止めた。相手が求めているのは「肩」という名前への施術だけではなく、明日の運転をどう判断するかだった。私は何を聞き、どこから先を自分で判断しないかを書き分けた。
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